文献要約2

和田真理子『成長する郊外・衰退する郊外―郊外住宅地の持続的成長には何が必要か』[2004]商大論集第56号4巻

  • 問題提起

都心居住に注目が集まり、郊外住宅地の高齢化が進行する中で、郊外は新しい住民を引き付ける魅力を失ってしまったのだろうか。本研究では郊外住宅地再生のために、多様な郊外の中でどのような住宅地が成長あるいは衰退しているかを見極め、その特色の中から生かすべき点、改善すべき点を明らかにする。


きちんと明示されておらず要約に不向きだと気付きました。反省。冒頭で、
少子高齢化の進展につれ、高度成長期に拡大した郊外住宅地をめぐる様々な問題に焦点があてられているが、多摩NTなど特殊なケースをジャーナリスティックに取り上げている感は否めない上、多様な郊外住宅地に対して一様に悲観的に論じることはあまり建設的ではない。
とありますので、それが先行研究(というよりもメディアの論調?)に対する批判に近いのではないかと思います。



    • 利用しているデータや資料

論文の前半では国勢調査や行政が発行している開発手法の分類データを使い、後半では住民に対するアンケート調査を活用している。アンケートは神戸市郊外の特定の住宅地にて全戸に対して配布され、回収率は3割台である。

  ・国勢調査(町丁目別人口データ)
  ・兵庫県兵庫県区画整理 平成16年度版』
  ・(新住宅市街地開発事業の図があるが、出典が明記されていないため、行政などの情報を基に独自に作成したと考えられる)
  ・一戸建て住宅に対するポスティングによるアンケート
  ・現地住民からのヒアリング

    • 分析方法

 神戸市の郊外住宅地を事例として取り上げ、国勢調査の町丁目人口データにより詳細な人口の動向を示した上で、人口が増加している地区の開発手法(新住宅市街地整備事業よりも区画整理、その中でも組合施工のもので人口が増加している)を明らかにする。
後半では開発時期の古い成熟した住宅地でのアンケートを基に、居住理由や満足度、生活環境で重視するもの、転出希望先、子との同居希望などといった項目から比較的現在の居住地に満足している一方、子世代と同居している世帯は少なく、日常に行き来できる範囲、すなわち近居が中心であることを考察している。


    • 結論

 郊外住宅地は必ずしも魅力を失ったわけではなく、依然として良好な住環境や自然環境、そして価格、住宅の広さ、必要に応じて都市へ出かけられるなど都市部とは別の魅力があり、こうした魅力が満たされていれば満足度は高い。郊外の持続的成長のためにはこうした魅力を維持し、子育て世代を中心とした若年層を継続的に呼び込むことが必要である。